しかし、村上さんは今回、低緯度オーロラが出るかは微妙だと考えていた。ましてや肉眼で見えるほどの明るさになるとは予測していなかった。
というのも、オーロラの原因となるフレアが、それほど大きなものではなかったからだ。
中規模程度のフレアは頻繁に起こる。ただ今回は、地球から見て太陽の真正面の中央部で爆発が起き、地球に太陽風が飛んで来やすいと考えて構えていたのだという。
太陽風が地球に到達すると予測された12月1日の昼すぎ、同天文台はX(旧ツイッター)に、こう投稿した。
「今晩、低緯度オーロラ現れるかもしれません。ただ、写真には写っても、肉眼で見えるほどの明るさにはならないと考えています」
人工衛星や地上の観測所のデータも見ながら、出現を待ち構えた。
そして午後8時20分ごろ、低緯度オーロラが出現。設置していたカメラに、赤い光が写り始めた。
スマホで撮影、ネット中継でも
「オーロラ出現」の情報をXに書き込むと、近くの住民たちがカメラを手に天文台にやって来た。オーロラが出ている方角を教えると、スマホでも撮影できたという人がいた。
低緯度オーロラは空の一部が明るくなるだけで、動きがないことが多い。ところが今回は一部分が柱状に光り、それが左右に移動する様子が見えた。
「オーロラの右側に月が上ってきたのですが、月明りにもかかわらずオーロラの赤い光がはっきりと写ったのは、不思議というか、まれです」
やがてオーロラの光は弱まり、村田さんらは天文台に戻ってカメラでの監視を始めたが、午後10時すぎに空が再び明るくなってきた。
「急にばーっと明るくなったんです。『おおっ』と思って外に出たら、淡く赤い光が見えた。低緯度オーロラの赤い光を見たのは初めてでしたから、それが本当にオーロラなのか、ひとりだったら自信がなかったと思います」
しかし、そこにいたスタッフ全員が、同じ赤い光を目にしていた。