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より強力に快適に使いやすくなったRAW現像ソフト

 アドビから、いまや定番の汎用RAW現像ソフトとなったフォトショップライトルームの最新版が発売された。今回のバージョンアップでは、パッケージ版(購入したらずっと使える)がライトルーム6で、クリエーティブクラウドの月額課金サブスクリプション版(月額使用料を払っている間だけ使える)はライトルームCCと異なる名前がつけられているが、ソフトウエアそのものは同じだ。

インターフェースはさほど変わっていない。前バージョンまたは前々バージョンのユーザーがアップデートしても迷わずに作業できることも一つのメリットといえなくもない
インターフェースはさほど変わっていない。前バージョンまたは前々バージョンのユーザーがアップデートしても迷わずに作業できることも一つのメリットといえなくもない

 カメラメーカー純正ではない、いわゆるサードパーティー製のRAW現像ソフトはここ数年で淘汰が進んだが、そんななか残るライトルームはユーザーのニーズに応えるべく正しく進化していて、本家フォトショップを併用していた画像編集作業も、ライトルームのみで完結できることが増えている。
 ライトルームは処理速度が速いことも魅力だが、今回のバージョンアップでさらなる高速化が実現している。CPUだけでなく、画面の表示などの処理を行うGPU(グラフィックプロセッサー)も使って、画像を処理するようになった。GPUの種類・性能によって異なり、「環境設定」の「パフォーマンス」で利用を確認できる。

GPU使用した処理を行うために、アドビの推奨している環境はOpenGL 3.3以降に対応したカードを推奨している。なお、今回から32ビットOSは非対応になったので、32ビットのWindowsを使っている人は注意したい
GPU使用した処理を行うために、アドビの推奨している環境はOpenGL 3.3以降に対応したカードを推奨している。なお、今回から32ビットOSは非対応になったので、32ビットのWindowsを使っている人は注意したい


 また、今さら?とも思えるが、顔認識機能も搭載された。非常に強力で「ライブラリ」モジュールのツールバーに配置されている「人物」アイコンをクリックするだけで、自動でカタログに保存されている写真から人物の顔を検出して表示する。検出された顔のサムネイルに名前を打ち込めば、画像のキーワードとして名前がタグ付けされる。このとき、同一人物とみなされる画像にも同時にタグ付けされるから、後でその人物の写っている写真を探すのも、名前で検索すれば済む。

顔認識を使うと、自動で検出した人物の顔がサムネイル表示される。サムネイルの下の「?」マークをクリックして名前を打ち込めば画像にタグ付けされる
顔認識を使うと、自動で検出した人物の顔がサムネイル表示される。サムネイルの下の「?」マークをクリックして名前を打ち込めば画像にタグ付けされる

 これまで本家フォトショップや専用のプラグインソフトなどで行っていた、HDR(ハイダイナミックレンジ)合成も、今回のバージョンアップによりライトルーム単体でもできるようになった。合成された画像はアドビのRAWファイルであるDNGフォーマットになり、合成後に大胆な調整を行ってもノイズの発生や階調の破綻が起こりにくい。また、同様にパノラマ合成機能もライトルームだけでできるようになった。カメラを少しずつパンさせて撮影した複数枚の写真をつなぎ合わせるのだが、手持ちでパンした写真でも驚くほど奇麗につながる。

明暗差の大きい被写体に対して露出をバラして撮影、合成し広いダイナミックレンジを得るのがHDR。「ライブラリ」モジュールでブラケティング撮影した複数枚を選択してから「写真」メニューで「写真の結合」から「HDR」を選択。合成された画像はDNGなので露出をはじめ、コントラストや彩度などを調整して仕上げられる
明暗差の大きい被写体に対して露出をバラして撮影、合成し広いダイナミックレンジを得るのがHDR。「ライブラリ」モジュールでブラケティング撮影した複数枚を選択してから「写真」メニューで「写真の結合」から「HDR」を選択。合成された画像はDNGなので露出をはじめ、コントラストや彩度などを調整して仕上げられる


 現像モジュールに追加された機能に「フィルターブラシ」がある。マスクを使った編集を加える際に「段階フィルター」と「円形フィルター」の適用範囲を、より詳細に指定するためのブラシだ。フィルターを適用したあとに部分的なマスクの描き足しや消去ができる。使い方は「補正ブラシ」と同様で、サイズ、ぼかし、流用を調節し、カーソルをドラッグするだけだ。これにより、画面の一部分、例えば空の部分だけを編集しやすくなった。


「段階フィルター」を使い空を濃くする。そのままではビルディングにまでフィルターがかかってしまうので、ビルディングの部分に効果がかからないように「フィルターブラシ」でフィルターの効果を消去するといった使い方ができるようになった
「段階フィルター」を使い空を濃くする。そのままではビルディングにまでフィルターがかかってしまうので、ビルディングの部分に効果がかからないように「フィルターブラシ」でフィルターの効果を消去するといった使い方ができるようになった


 そのほか、HTML5に対応したウェブギャラリーや、静止画のほか、ビデオや音楽を使った高度のスライドショー作成、モバイルデバイスとの連係などが強化されている。
 前回同様に大幅に進化したとはいえないが、確実に使いやすくなり、作業効率を向上させている。

◆増田雄彦


* * *
●Windows版
OS:Windows7SP1/8/8.1
CPU:インテル/AMDで64ビット対応のもの
メモリー:2GB以上(4GB以上推奨)
ハードディスク:2GB以上の空き容量
GPU関連機能向けにOpenGL 3.3およびDirectX 10対応のグラフィックカード

●Mac版
OS:Mac OS X 10.8/10.9/10.10
CPU:インテルマルチコアで64ビット対応のもの
メモリー:2GB以上(4GB以上推奨)
ハードディスク:2GB以上の空き容量
GPU関連機能向けにOpenGL 3.3対応のグラフィックカード

●価格
Creative Cloudフォトグラフィプラン(PhotoshopCCも使用可)で月額980円。
同一機能のパッケージ版のLightroom6は実売1万6080円