身体に関することは、男女の立場を入れかえて説明することはとても難しい。妊娠する可能性がゼロの身体の人に、「妊娠したかもしれない(したくないのに!)」という不安や恐怖は、本当にはわからないだろう。しかも、妊娠=おめでたいこと、という社会では、「妊娠したくない! 怖い!」という女性の気持ちは「身勝手」と一方的に断罪される空気も未だにある。なによりこの国では、女性の身体にまつわる様々な重要な決め事を「絶対に妊娠しない身体の人たち」が決めてきた。それでも、無理やり、男女を入れかえるとしたら、こんなようなことなのだと思う。

 全国の男性のみなさ〜ん。これからあなたたちが射精するときは、その後に起きる全ての出来事に責任が生じることを了承しましょう。責任がもてない、またはうまく避妊できる自信がないときは、射精をする72時間前には病院に行き、医師に「緊急事前避妊薬」を処方してもらい射精の許可を得てくださいね。緊急事前避妊薬は医師の前で飲まなければいけませんよ。自費診療なので2万円しますけどね。射精をしたいためだけに緊急事前避妊薬を濫用する男性が増えると困るので、薬局で簡単に買えるような薬にはしませんから。でもね、緊急事前避妊薬は身体への負担もあるので、毎回気軽に飲むのはダメよ。毎回のことであれば、パイプカットや、低用量ピルもオススメです。自分の身体を管理し、避妊に備えるのは、射精する側が考えなくちゃいけないことだから。パイプカットも低用量ピルも高額負担になるけれど、自己責任で頑張ってね。最近は男性運動が盛りあがってきたので、全国145カ所の薬局で処方箋なしで緊急事前避妊薬を試験的に販売してあげますよ。どこの薬局かは、自分で探してみて。ちなみにこの薬を買う場合、相手の女性の同意が必要です。購入したら、その場で、薬剤師の目の前で飲むべしです。だって持って帰られたら、悪用される可能性がありますから。だいたい未熟な男性の判断は信用できないんですよ。わかってます? 1回の射精に何億個の命の源が入っていると思います? 未来の命を無駄にせずに、ちゃんと自覚をもって射精しましょう。

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