調査研究が始まった緊急避妊薬について、男女の立場を逆転して考えてみませんか?(写真はイメージです/gettyimages)

 避妊に失敗したセックスの後、72時間以内に服用すれば、かなり高い確率で受精を防ぐことができる緊急避妊薬。多くの国で、薬局に行けばフツーに安価で(国によっては無料で)手に入る薬だが、日本では産婦人科などに行かねばならず、しかも自費診療で、病院によっても値段が違い5千〜2万円もするハードルの高い薬だった。……「だった」と書くのはまだ早いかもしれない。ただようやく、今月28日から、医師の処方箋なく薬局で購入できる方向に進むための調査研究(まどろこしいですね)が始まったのだ。

 ああやっと!! やっとここまでたどり着いたのね……と喜ばしい気持ちで、どれどれどこの薬局でやっているのかしら? とネットで調べてみているのだけれど……すみません、私の検索能力ではどの薬局で売り始めたのか、全くわかりませんでした。薬局の名前が、出てこない。ここなのかな? とあたりをつけて調べても、確信がもてる情報が何一つ出てこない(28日午前中現在)。これ、今、不安で泣きたい気持ちでネット検索している女性からしたら、かなりの地獄ではないか。何でも検索できる世界なのに、今の今、自分に必要な薬がどこで売っているかすらわからないなんて。

しかも全国に6万軒ある調剤薬局の中で、この調査に参加しているのはたった145軒だけ。運良く家の近くに選ばれた薬局があったとしても、購入できるのは16歳以上だけ。さらに18歳未満であれば保護者同意が必要で、さらに同伴してもらわなければいけない。なにより薬は約7千〜9千円で、買った後すぐに薬剤師の目の前で飲まなければいけない。……「調査研究」とはいえ、いくらなんでもハードルが高すぎるのではないか。「だったら近くの病院に行けばいい」という声が聞こえてきそうだが、未成年の女性が「妊娠したかもしれない」と病院に行く心理的ハードルの高さを、どうか想像してほしい。どれだけの女性が、性交後72時間以内に、適切な情報をもって、病院に行くことができるというのだろう。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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