南野陽子

求められる「いい女」的なもの

 そういう男性はルックス優先というか「いい女」的なものをまず求めて、そこから絆を強めていくような恋愛をしがちだ。そのぶん、女性ならではのロマンチックな内面に気づきにくく、それよりは家事などの生活能力を重視したりする。

 したがって、彼女と同じ年に歌手デビューした斉藤由貴のようなタイプにはあまり向かわない。その点、南野は美貌が売りで、お嬢さま育ちでもあり「いい女」的なイメージが先行しがちだ。が、その一方で、かなりロマンチックな内面も持ち合わせていた。

 女子校時代、同じ電車を使う他校の男子に憧れ「ギザギザ君」というあだ名をひそかにつけてみたり。子どもの頃に書いたという童話(マンガだったかも?)のあらすじも、ホコリ(埃)を擬人化したかわいくてユニークなものだった。そんなところもちゃんと理解してくれる相手じゃないと、物足らないのではないか。

 そして何より、彼女は我が強い。デビューにあたっては、事務所が弱小だったため、自分で仕事を取りにいった。彼女の存在を知らしめた「デラックスマガジン」(講談社)のグラビアも自ら交渉して増ページに成功。前出の「スケバン刑事」にせよ「フジカラー」のCMにせよ、自ら調べてオーディションを受けたという。

 そんな性格は事務所とのトラブルでさらにエスカレートした。彼女のマネジメントは作曲家・都倉俊一が経営するエスワン・カンパニーと劇団青年座が分担して行っていたが、そのせいで、ダブルブッキングが続出。89年には、東京ドームで開催された富士通の新作パソコン発表イベントをドタキャンする騒動も起きた。

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優しくされると頼ってしまう