姜尚中(カン・サンジュン)/東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史
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 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 APEC(アジア太平洋経済協力会議)が閉幕しました。米国のグランドストラテジー(世界戦略)の機軸をアジア・太平洋に移し、中国に対する巻き返しをアピールする格好の檜舞台であるはずのAPECなのに、主催国の指導力を発揮し得たとは言えないという点で米国の目算は狂ったと言えるようです。

 その一つ目の理由は、やはり長引くウクライナでの戦争でしょう。米国の何人かの戦略家は、この冬をウクライナは越えられないのではないか、越したとしてもロシアと何らかの交渉に入らざるを得ないのではないかと予想しています。ウクライナ問題が今回のパレスチナ問題でフェードアウェーして、ロシアの事実上の粘り勝ちになってしまう可能性も出てきました。これは、米国の誤算でしょう。

 さらに降って湧いたようなパレスチナ問題です。ハマスによってパンドラの箱が開けられてしまったわけですが、その結果、皮肉にも第3次中東戦争以来、米国が拒否権を行使してでも一貫してイスラエルの立場に立ってきた大国のダブルスタンダードが明るみに出ました。

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