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 キリスト教の迫害が続いていた3世紀、ローマ帝国領シチリア州の総督クィンティアヌスは、キリスト教を信仰する貴族の娘のアガタに求愛したが、受け入れられなかったため、さまざまな拷問を行った。どんな拷問にも屈さず殉教したアガタは、聖女として名を馳せた。時を超えてアガタの霊に母の病気を治してもらったルキアは、また強い信仰心で奇跡を起こし聖女となった。清涼院流水氏の新著『どろどろの聖人伝』(朝日新書)では、周囲のどろどろした愛憎劇に巻き込まれ、聖性を際立たせた聖人たちが紹介されている。同著から一部を抜粋、再編集し、時を超えて共鳴した二人の聖女を紹介する。

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 皇帝デキウスによる迫害が続いていた3世紀、ローマ帝国領シチリア州(シチリア島)の総督クィンティアヌスは、カタニア市の貴族の美しい娘アガタに恋し、彼女を自分のものにしたいと願い、求愛しました。ところがアガタが応じなかったので、クィンティアヌスは彼女を娼館に閉じ込めます。娼婦たちによってアガタを堕落させることがねらいでしたが、聖女のイエス・キリストへの信仰は、まったく揺らぎませんでした。

 クィンティアヌスは兵士にアガタを殴らせ、拷問を加えましたが、聖女が屈しないので、ついに彼女の乳房を斬り落とさせます。それでもアガタは動じませんでした。

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刑の執行の瞬間大地震で町は倒壊