だからこそ「子規をテーマに対談を」と本の企画が届いた時、艶俳句に目が留まった。
〈傾城の罪をつくるや紅の花〉〈出女が風邪引聲の夜寒かな〉
遊里や遊女についての句を多く詠んでいたのは、意外だった。「印象に残ったのは、いやらしさを感じさせない、絶妙なバランス感覚」と言う。
「子規の想像力、そして体験をくみながらの“品の良さ”がなんとも言えない。子規の艶俳句に触れてから他の句を読むと、他の句も動き出すような感覚があるんです」
遊郭で働く女性たちにたくましさを見いだし、ときに尊敬の眼差しを向ける。
「せつなさや束の間の喜びを含めた、女性としての喜怒哀楽。そこにかりそめの幸せが加われば、一本の映画になりそうだよね」と奥田さん。
子規の艶俳句だけをまとめた、スマートでかっこいい句集がいまの時代に出版されることも密かに期待している。
「実際にこれだけ多くの艶俳句を残しているわけだから。時代を超えて人々の目に触れてほしい、と子規自身も望んでいたはず。彼の艶俳句を読んだとき、そう感じたんだ」
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2023年11月27日号