特に最近実感したのが、母校である「慶應義塾」です。夏の甲子園で優勝を果たした慶應高校に対して、あれほど全国の卒業生(慶應内部では「塾員」と呼ぶ)が熱くなったのは、まさに「宗教的」な愛校心と帰属意識があるからにほかならず、それは他の学校でも多かれ少なかれ見られる現象なのではないでしょうか。

 中でも慶應義塾におけるそれは、もはや「信心」そのものです。だからと言って、創設者である福澤諭吉の顔が印刷された1万円札を手に取るたびに、「されども今広くこの人間世界を見渡すに、賢き人あり、愚かなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるは何ぞや」などと唱えたりはしません。もちろん個人差はありますが、ほとんどの塾生・塾員たちが、己の帰属意識に対して、ほとんど無自覚に生きています。

 この「無自覚で当たり前な実感」こそ、あらゆる宗教心が最終的に辿り着くべき境地であり、おそらく創価学会員たちが大切にしている信仰や、池田大作氏への敬意というのは、それに似ているように推察されます。
 

 愛校心のほかにも、愛社心、政治思想、動物愛、そしてアイドルやスポーツなどのファンダムなども、極めて宗教的な精神構造の上に成り立っていると言えるでしょう。

「宗教的精神構造」で、もっとも陥り易い過ちは、「自分が好きなものや人を好きではない人に失望する」もしくは「自分の価値観・主張を強要する」、さらに時には「共感を得られない人や、別の価値観を持つ人を攻撃する」ことです。

 こういった「妄信的」な人々のアウトプットの具合は、ネットやSNSの発達とともに、日々見境のないものになってきている印象です。

 先日近所の「坊主バー(本物の住職がやっているバー)」に行った際、2時間に1回ある読経タイムの最中に、酔っぱらったアメリカ人の客が、大声で「アーメン!」と叫んでいました。理想的な光景でした。死ぬほど笑いました。

著者プロフィールを見る
ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

ミッツ・マングローブの記事一覧はこちら