鑑賞に訪れた天皇陛下は、こうした伝統装束の着こなしについて熱心に愛子さまに説明していたという。
前期には、「おじいさま」と「おばあさま」から贈られた愛子さまの「御初召(おうぶめし」も展示された。愛子さまが誕生したのは、2001年12月1日。「命名の儀」と、一般のお宮参りにあたる「賢所皇霊殿神殿(かしこどころこうれいでんしんでん)に謁するの儀」では、当時の両陛下より贈られた産衣(うぶぎ)である「御初召」を着用して臨んだ。
この「御初召」は、特別な品だ。というのも、歴代皇后は皇居の紅葉山御養蚕所で蚕を育てる。愛子さまの産着は、美智子さまが育てた繭から採られた絹糸で織られたものだ。
特に、肌に触れる下召(下着)には、柔らかな絹糸が採れる純国産の小石丸の繭が用いられた。
11月28日から12月24日にかけての後期には、愛子さまの装束も赤ちゃんの時期の「御初召」から、一般の七五三にあたる「着袴(ちゃっこ)の儀」で用いた「御童形服(ごどうぎょうふく)」と「袿袴(けいこ)」などに変わる。
「着袴の儀」とは、数え年の5歳で初めて袴を着ける皇室の伝統行事で健やかな成長を願う儀式だ。愛子さまの赤い「御童形服」は、当時の住まいであった東宮御所の日月の間で執り行われた儀式で着用された。
桃色の袿(うちぎ)と丈の短い切袴(きりばかま)の「袿袴」。儀式を終えて皇居に参内する際は、動きやすい「袿袴」に着替えるものの、4歳の愛子さまには重くて大変な衣装だ。
当時の写真を振り返ると、雅子さまが小さな愛子さまを支えるように手を伸ばすシーンも残っており、ほほえましいご一家の様子が伝わってくる。
実は、ご一家の日常が伝わる品も見ることができる。全期間を通じて、私的な品も展示されているのだ。天皇陛下が幼少時に愛用した小さなヴァイオリンや、雅子さまがご結婚後に習ったフルートの実物も見ることができる。
愛子さまの青春のひとコマを垣間見えるのは、愛子さまが撮影した写真作品だ。2018年の夏、16歳だった愛子さまは、学習院女子高等科のプログラムで英国の名門・イートン校が主催する夏季海外研修に参加した。
同級生と学生寮に宿泊し授業を受けた。滞在する間に、オックスフォード大学の周辺や学生寮などを自ら撮影した写真も展示されている。
「愛子さまらしい」写真もある。
いちごパフェのようなデザートの写真には、「イートン・メス」と説明が添えられている。これは、メレンゲと生クリームといちごなどで作る英国の伝統的なデザートのようだ。
別の写真には、ウィンザー城の入場券を持つ手が写っている。お友達と一緒に写したのだろうか。愛子さまたちの笑い声が聞こえてきそうな一枚だ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)