「懐かしいですね」
11月10日、天皇陛下と皇后雅子さま、長女の愛子さまはリニューアルオープンした皇居三の丸尚蔵館で、陛下の即位5年とおふたりのご結婚30年を記念した特別展示を鑑賞した。
ご一家は、ご結婚の際に雅子さまが着用したローブ・モンタントの前で足を止めた。
1993年6月15日から3日間にわたり行われた結婚の祝福を受ける「宮中饗宴(きょうえん)の儀」。雅子さまが1日目の1回目にお召しになったのが、光沢のある杏色のローブ・モンタントとビーズで彩られた美しい帽子だった。
雅子さまは、ドレスを前にしてこう目を細めた。
「久しぶりに見た気がします。懐かしいです」
一方で、隣にいた愛子さまは興味深そうに、こう話しかけていた。
「模様は?」
「自分では(ドレスを着用)できないのね」
また、おふたりが「結婚の儀」でお召しになった古式装束も展示されていた。
皇太子であった陛下は、「黄丹袍(おうにのほう)」、皇太子妃の雅子さまは、一般では「十二単衣」と呼ばれる、「五衣唐衣裳(いつつぎぬからぎぬも)」の装束で儀式に臨んだ。装束に詳しい宮内庁関係者によれば、東宮(皇太子)が身に着ける、淡い黄みがかった緋の「黄丹袍(おうにのほう)」を「上りゆく朝日」と表現した書物もあったという。
天皇だけが身につけることができる赤茶色の伝統装束、「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」も全期間に渡り展示されている。袍に表された、桐と竹の上に鳳凰が舞い、州浜に麒麟が相対する「桐竹鳳凰麒麟文」は天皇だけが用いる文様。前期は冬の袍、後期は夏の袍が展示され、実物を目にすることのできる貴重な機会だ。
「天に太陽が上った色」とも言われる「黄櫨染御袍」は、令和の天皇の即位を国内外に宣言する「即位礼正殿の儀」で着用された。ウルシ科のハゼノキの皮とマメ科のスオウ、灰汁などで染めた淡い茶色の装束だ。即位式のほか、祭祀でも用いられている。
即位関連の儀式で用いられた屏風などの調度品も興味深い。たとえば、「即位礼正殿の儀」で宮殿中庭に配置された「旛」。「萬歳旛(ばんざいばん)」には、当時の安倍晋三内閣総理大臣が揮毫した文字が金糸で刺繍されている。