「卵子凍結」は30代の女性の選択肢の一つになってきたようだ(写真はイメージです/gettyimages)
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、指原莉乃さんも行ったという、「卵子凍結」という選択肢と、女性の身体と命について。

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 指原莉乃さんが、31歳の誕生日に「今年も今のところ結婚願望なし、卵子凍結済みで生活してます」とSNSに投稿し、「卵子凍結」が一時トレンド入りするなど話題になっている。反応も概ね好意的で、30代女性の選択肢の一つとして確実に「卵子凍結」が入ってきたことを実感する。

 実際、この数年、「卵子凍結を考えてます」という20代〜30代前半の女性に私は何人か会っている。「今は仕事に集中したいし、相手もいない。でも、いつか子供はほしい。だから若いうちに卵子は凍結しておきたい!」という「人生を前向きに生きるための卵子凍結」という明るさがある。今年出版された「アンアン」のムック「私たちのフェムケア2023」でも、若い女性の選択肢として卵子凍結が紹介され、まるで卵子凍結がフェムテックの最先端のように扱われはじめているのを実感している。

 そういう情報に素早く反応するのは、自分の人生を制限なく生きたいと望み、自分の人生を自分でコントロールしたいと強い意思を持ち、自分の人生を何一つ諦めたくないと主体的に生きようとする女性たちだ。

 え、ちょっと待って! そんなキラキラした選択肢なんて、きっと訳ありよ! と疑い深い私などはモヤモヤするのだが、「女性の選択肢を広げる」という大義名分は強い。実際、私たちは不妊に苦しむ女性の物語を知っている。不妊治療には国が自ら力をいれているが、治療をしたからと言って、妊娠・出産が100%約束されるわけではない。さらに、不妊治療は女性の心身に苛烈な負担をかけるものでもある。そういった不妊治療の苦しさを、若い女性が先回りして自らの身体で回収し、解決する、それが「卵子凍結」という選択肢だ。将来後悔しないための賢い選択……若いうちから貯蓄に励み、将来に備えて資産運用するのと同じようなものだろう。

 ただ、貯蓄をするのと、新しい命の担保をするのはやはり少し訳が違う。

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女性の身体的負荷や経済的負担は