音楽作るって楽しい!
それは多岐にわたってありますね。“枠”があってないようなものなので、これまでできないだろうと思ってきたことが、シンプルにできるというか。新しいアイデアとか、「こうしたい」と思うものに対して、「それはダメなんじゃない?」がない。もちろん何でもいいわけじゃないけど、自分が正しいと思うエンタメに関するアプローチはスムーズにできると思う。それだけで可能性って相当変わるんじゃないかな。大きな組織になればなるほど、ジャッジに時間がかかるじゃないですか。でも、TOBEは滝沢(秀明)社長と話してOKだったら、もうOK。楽曲も仕事を決めることも、すべてが驚くほどスピーディー。そこはTOBEならではの良さだと思います。
──今、取り組んでいる音楽制作のスタイルも大きく変わった。
今までは、デモの段階の楽曲をコンペで集めた中から1曲選んで、「もっとこうしたい」というやり取りを重ねながら仕上げていく感じでした。それが今は、最初から僕が一緒にやりたいプロの方たちとスタジオに入って、その場で一緒に作っちゃう、コライト(複数人で制作する作曲スタイル)という形で作ったりしています。たとえば僕がギターを弾いて「こんな感じのコード、どう?」と提案して、そこにメロ(ディー)をラララで入れていく。それを受けて「じゃあベースはこんな感じでどう?」「ドラムはこの楽曲の、ここら辺のフレーズがかっこいいよね」「じゃ、そんな感じで作ってみましょう」みたいな。その間に僕は歌詞も書いて。その場でやりたいことが全部反映できるから、細かい自分のスパイスみたいなものを入れやすいし、一緒に作るプロの方たちもコンペに出すとかじゃないからウィンウィン。これまでにない楽曲制作のアプローチができるから、スタジオ内が盛り上がっています(笑)。作詞作曲はこれまでもやってきたけど、ここまで深く楽曲制作に携わるのは初めてで。こういう環境に自分の身を置けることが嬉しいし、なんか……音楽作るって楽しい!って。
(ライター・大道絵里子)
※AERA 2023年11月27日号より抜粋