お散歩中の鈴木志野さんと娘たち=2017年、高知県ヤ・シィパーク

――2019年には任期の付かない研究員になったんですね。

 はい。ただ、日本は女性研究者が少ないのでどうしても目立ってしまう。応援してくれる上司もいたんですけど、もともと任期付きだったので「次どうするか」は常に考えていて、やっぱり独立したポスト(PI=研究責任者)に就きたいと思ったころに宇宙研の准教授の公募が出たんです。私の両親も夫の両親もわりとこの近くに住んでいたので、関東に戻るちょうど良いタイミングだと思って応募したら、幸い、採用されました。

――夫は?

 同じJAMSTECの中で横須賀本部(神奈川県)に異動させてもらいました。

――同じタイミングで?

 はい。

――宇宙研のある相模原から横須賀まで、結構遠いですよね。

 遠いですけど、一緒に住んでいます。私が宇宙研に移ったのは、生命の起源を知ろうと思ったら、地球の生命だけ調べていても限界があるからです。来年から、MMX(Martian Moons eXploration=火星衛星探査計画)っていう、世界で初めて火星の衛星からサンプルを採ってくるJAXAのミッションが予定されているんですけど、それを側面からですが、支えるような仕事もここでやっています。なので、来年の打ち上げはものすごく楽しみですし、その先にあるであろう火星探査や土星の衛星エンセラダスの探査を楽しみにしています。エンセラダスの地下には海があると考えられていて、その海底下ではおそらく北カリフォルニアの山奥の地下と同じような反応が起きているんですよ。

すみやすい地球であってほしい

 私の本業は、極限環境にいる微生物を調べることで、とくに今は炭素固定の多様性や起源を明らかにしたい。最初の生命はどうやって炭素固定していたのか。酸素がない環境では、一酸化炭素が大きな役割を果たしていたのではないかという仮説があり、そこを明らかにしていきたい。

 一方、子どもを育てていると、人類にとってすみやすい地球であってほしいな、というような思いが出てくるんですよ。基礎研究で得られた知識を、増え続けるCO2の問題解決に役立てることはできないだろうか、というのが新たな目標の一つで、それを理研でやっていきたいと思っています。

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