鈴木志野さん=相模原市のJAXA宇宙科学研究所

――アハハハ。想定の範囲をはるかに超えた方向から来た答えだったでしょうね。

 私たち、結婚するときは「夫婦は別々に住まない」という約束をしたんです。

――それは研究者カップルとしては珍しいですね。

 もし、夫婦が別々に住まなければならなくなったら私が仕事を辞める。その代わり、家族を路頭に迷わせない責任は夫が持つ。それが、結婚するときの最初の約束です。仕事は変えられるけど、家族はそうはいかない。家族になるなら一緒に積み上げていきたい、というのが私の考えなんです。夫には仕事でベストを尽くしてもらって、私はついていくと言ったら、夫も「それでいい」って。

結婚して5年は子どもを産まない

 ただ、私も心機一転して米国で研究するのだから、当面は研究に集中したいと思った。私はいろんなことを同時にはできないので、今は子どもを欲しくないと言いました。夫は絶対子どもが欲しいと言った。私は「そもそも結婚して3年以上たたないと本当にあなたとやっていけるかわからない」って……。

――へ? そんなこと言ったんですか?

 はい。私は疑り深いんですよ。それに、子どもを産んだらすごく大事になっちゃうから、「ほかのことを失ってもいいと思えないと産めない」と言った。そのころはまだ「科学の本当の楽しさ」を体験できていなかったし、夫を本当に信じられるのかもわかんないし……。

――(笑)

 お互いわかんないじゃないですか、そんなの(笑)。だから、「結婚して5年は子どもを産まない」と宣言したんです。ところが私が35歳になるとき、高齢出産になるからそろそろ真剣に考えるべきときだと夫が言って、話し合ったんですよ。彼は何も望まないタイプなのにこんなに子どもを望んでいるのはよっぽどのことなんだと思って、結婚4年目に「産むまではやるけど、あとはお願いね」って言って産みました。

 彼はむしろ「そこから先は全部僕がやりたい」みたいな感じで、本当によくやりました。とくにウンチのオムツは夫が9割替えましたね。

――へえ~!

 本当に分業です。料理は私、洗濯は夫、という感じ。子どもが少し大きくなってからは、ピアノは私が見て、勉強は夫が見る、とか。

次のページ 教育は日本のほうがいいと思った