猿之助と中車の「実力差」
猿之助被告が不在となった今、一門の澤瀉屋を支えているのは、市川中車(57=俳優の香川照之)だ。事件後も、長男の市川團子(19)とともに公演を続け、澤瀉屋を牽引している。だが、演劇評論家の山本健一氏は「猿之助と中車ではかなりの実力差がある」と話す。
「歌舞伎の演技力は圧倒的に猿之助の方が上です。中車はせいぜい、セリフ劇ができる程度。踊りの表現力や、時代もののセリフ回しなど、歌舞伎の本道で求められる演技力は猿之助とは比較になりません」
香川(中車)は、三代目市川猿之助(二代目猿翁)と浜木錦子の長男。本来なら、香川が四代目猿之助を名乗っても不思議ではない家柄だが、香川が3歳の時、両親が離婚。三代目猿之助は2000年に舞踏家の藤間紫と再婚したことで、香川とは長い間、断絶関係が続いた。
その香川は俳優としての道を歩み、「半沢直樹」シリーズなどで大ブレーク。ドラマ、映画に引っ張りだこになったが、22年に「デイリー新潮」が銀座のクラブのホステスへのセクハラ暴行疑惑を報じ、テレビ界から姿を消した。そして、猿之助被告の事件後、再び歌舞伎界に舞い戻ったのだ。
前出の山本氏は言う。
「テレビの演技と歌舞伎とはまた違いますからね。きちんと踊りの稽古を積んでおかないと、一挙手一投足が形にはまってこない。歌舞伎俳優の体というのは彫刻みたいなもの。四方八方どこから見ても、彫刻のように美しい形を保たなきゃいけないんです。その基本は日舞、つまり踊りです。中車は、歌舞伎俳優として訓練を経ていないから、どうしても活躍の場が限定されてしまう」