北海道南部の大千軒岳(福島町、標高1072メートル)の山中で11月2日、北海道大学水産学部(函館市)の大学生の遺体が発見された。近くではヒグマの死がいも見つかっており、クマに襲われたとみられる。そしてヒグマに詳しい専門家は「このクマは、食べるために人間を襲った」と言い切る。遺体は隠すように土や木の葉で覆われており、いわゆる「ヒグマの土饅頭(つちまんじゅう)」がつくられていたからだ。
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北海道ヒグマ対策室や現地報道によると、北大生(22)が日帰り登山で大千軒岳を訪れたのは10月29日。この日にクマに襲われたとみられている。
その2日後、近くの消防署に勤務する消防士3人がこの山を登っていたところ、突然クマに襲われた。
消防士は持っていた山菜採り用の刃物を使って抵抗。眼の周囲や首などを刺したところ、クマは逃げ去ったが、40代の消防士2人が負傷した。
11月2日、行方不明になっていた北大生の遺体とクマの死がいが発見された。北海道や道警などが現場に残されていたクマの死がいを調査。クマはオスで、体長125センチ。消防士のナイフが首の大動脈に達し、致命傷を負わせていたことがわかった。
消防士たちは登山中、ホイッスルを鳴らし、存在を周囲に知らせていた。にもかかわらず、クマは立ち去るどころか、堂々と人間に近づき、襲ったということになる。なぜなのか?
長年、ヒグマの生態を調査してきた北海道野生動物研究所の門崎允昭(まさあき)所長は、見つかった大学生の遺体が土や木の葉で覆われ、「ヒグマの土饅頭(つちまんじゅう)」がつくられていたことに着目する。
つまり、ヒグマは大学生の遺体を、「食べ物」として扱っていたことを意味する。
「おそらくクマは当時、大学生の遺体とともに登山道の近くにいた。そこに消防士たちが接近してきた。クマは『食べ物』を守ろうとして、消防士を排除しようとしたが、ナイフで刺され、遺体の近くに戻ったところで息絶えたのでしょう」