人に気づき、警戒する母子グマ=門崎允昭さん提供

 ヒグマの生息域に足を踏み入れる際には、クマに出合わない方法や、万が一襲われても被害を最小限にする対策をあらかじめ準備しておく必要がある。

 門崎さんが必需品とするのは、高い音が響き渡るホイッスルと、刃渡り20センチほどの鉈(なた)で、この二つを常に持ち歩いてきた。

「森の中で人間の存在を知らせるために鈴やラジオが使われることが多いですが、風が強い日や沢筋では音がかき消されてしまい、十分な効果を発揮しません」

 自発的にホイッスルを時々吹くことでクマに対する警戒心を持続しやすく、吹かないときは邪魔な音がないので、クマの存在を察知しやすい。
 

ヒグマ除けのホイッスルと反撃するための鉈(なた)=門崎允昭さん提供

最後は戦う覚悟を

 ただ、ホイッスルを吹いてもクマに出合ってしまう場合もある。

「そんなときはまず、クマの様子を観察します。向こうがぼくに気づいていなければ、『ホイホイ、ホイホイ』と声を出します。さらに『お前、何してんの』などと話しかけます。するとクマは気がついて、ほとんどの場合は離れていきます」

 門崎さんが感じている、クマと人の「臨界距離」は約30メートル。

「話しかけてもクマが立ち去らず、30メートル以内に近づいてくる場合は要注意です。一見して不快そうな顔つきのクマや、本当に冷徹な表情のクマもいます。『ダメダメ』『こっちに来るな』とか、大声を出してクマから離れます」

 その際、重要なのは決して背中をクマに見せないことだ。クマは背を向けて逃げる動物を襲う習性があるからだ。

「柔和な表情でこちらに歩いてくる場合は、私の横を通って行きたいだけなので、そのまま通り過ぎます。2、3メートル横を歩いていったことが何回もあります。ただ、一般の人にはお勧めしません」
 

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「死んだふり」は通用しない