加藤綾菜さん(撮影/写真映像部・和仁貢介)

10年たったら世間が変わっていた

 初めは茶さんの言葉に「10年って長いわ! 耐えれんわ!」と綾菜さんは思ったという。しかし、状況は次第に変わっていった。

「10年くらいたったときから、本当に世間の見方が変わってきたんですよ。『応援しているよ』って街で声かけられるようになって。自分は変わってなかったのに周りが変わっていくのを肌で感じて、『加トちゃんが言ってたことってホントだったんだ』ってそのとき実感しました。いま12年が過ぎていますけど、あっという間だったなと思います」

 バッシングを受けていた当時、普段通りにふるまっていた茶さんも実は綾菜さんと同じように傷ついていたのだという。ある日、二人で話していたときのことをコミックエッセー『加トちゃんといっしょ』(双葉社)でこう語っている(「」内は茶さんの発言)。

≪「芸能生活60年、いままで生きてきて、本当にいろいろなことがあったな。でも人生で一番ツラかったのは、あーたん[編集部注:綾菜さんのこと]がバッシングされたことだよ」 ああそうか、加トちゃんは、人知れず、ずーっと気にしてて傷ついていたんだ。それでも、ぐっとこらえて、何も言わず、出会った頃のようにわたしと接してくれていたんだ。当時のわたしは、自分ひとりだけが傷ついていると思っていて、まったく気づきもしなかった。≫

 綾菜さんは言う。

「『10年忍耐』という言葉があったからこそ、バッシングにも耐えられたんだと思います。このときの感謝が今でもずっとあって、だから加トちゃんが病気しても、何しても嫌だなってならずに、むしろ『やっと恩返しできるときが来た』と思うんです」

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