「生きていくことはごく自然に傷むこと。でも、それが苦痛や後悔として積み上がる仕事が、年齢を重ねるほど苦しい」とは不倫中の女優を描いた島本理生さんの小説『憐憫』の中の言葉ですが、女優でなくともかつて持っていたものが年齢とともに削り取られていくような感覚は多くの大人女性が感じたことのある感覚ですよね。もちろん、積み重なっているものも新しく得るものもあるのでしょうが、二月に親しい友人が産んだまだ一歳に満たない小さな女の子の肌や身体と自分のそれらとを見比べると、いかに自分が傷んできたかを実感します。

 現在ではちょっとした整形から美容医療などが比較的どこでも気軽かつ安価に受けられますが、私は特に何も不調を抱えていなかった二十代前半のほうが、今思えば無駄なほど美容にお金と時間をかけていました。とはいってもどれも中途半端で、SNSでよく見る、20キロ痩せて人生変わった、とか、200万円かけた顔のビフォアアフター、みたいな次元で見た目が変わったことはありません。今は美容院もネイルサロンも最低限しか行きませんが、当時は雑誌で見た眉毛サロンに行きたいとか、ホテルのスパでトリートメントを受けたいとか、台湾で美容鍼を受けたいとか、そういうちょっとした美容体験を繰り返していました。スパでボディメイクをした直後に海に行って死ぬほど煙草を吸いながら日焼けして海の家で飲んだくれる、というような元来意識低い系の生活をしていたので、プラスマイナスで言えばマイナスのことのほうがきっと多かったかもしれません。

 あの頃の私に、「エステなんて行かないでいいし、高い化粧品も買わないでいいから日焼けと煙草をやめて勉強して運動してよく食べてよく寝ろ」と言いたいですが、人生ってわかっていても変えられないことのほうが多いので今も夏になると血が騒いでうっかり水着の跡をつけちゃうし、煙草もやめてないし、睡眠も不規則で短いままです。

暮らしとモノ班 for promotion
美空ひばり、山口百恵、大橋純子、チェッカーズ、来生たかお…懐かしの歌謡曲売れ筋ランキング
次のページ
やってよかった美容法は…