
ガザの伯母が音信不通

デモ隊の横でスマホ画面を見つめていたパレスチナ系米国人のニダル・バラカットさんは、「ガザ中央部に住む伯母と4日前から連絡が取れない。生死すらわからない」と悲痛な声で語る。6歳から11歳の彼の3人の孫が走り回ってパレスチナの国旗やスカーフを振る。その姿を撮影しながら彼は言った。
「私は1969年にパレスチナから米国に移民してきた。バイデンは自分の国の大統領というよりも、イスラエルの大統領なんじゃないかと思えてくるよ」
緑と白と黒と赤のパレスチナ旗が無数にはためくデモ行進の中で「ジェノサイドに反対するユダヤ系」という手書きのサインを掲げていたのは、科学ライターのジェナ・シャーマンさん(28)だ。彼女は「イスラエル人が拉致されて殺され、人質に取られた映像を見ると、同じユダヤ系として胸が張り裂ける思い」と言う。「でも、私のその痛みが、ガザ市民を虐殺する理由として使われていることが許せない」と語る。ホロコーストを生き延びた親戚がいる彼女が、イスラエルの軍事行動に反対すると、彼女の家族は激怒した。
「面と向かって怒鳴られた。たくさん泣いたし、友人も何人か失った。でも報復と称してガザの一般市民の命を奪うのを正当化することは、決して許せない」
自分が払った税金が、イスラエルへの軍事増強とガザ爆撃に使われるのも断固反対だと語る。(在米ジャーナリスト・長野美穂)
※AERA 2023年11月13日号より抜粋