「1%をめど」に修正した日本銀行の植田和男総裁

 日本銀行は10月31日の金融政策決定会合で長期金利の上限を従来の1%から「1%をめど」に修正し、1%を超える金利上昇を容認する姿勢を示した。長期金利の上昇は、住宅ローンや生命保険など金融商品にも影響がおよぶ。金利上昇への備え方や心構えを専門家に聞いた。

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 日銀は3カ月前の7月の会合で長期金利の上限を0.5%から1%に引き上げたばかりだ。国債を無制限に買い入れる「指値オペ」で金利を抑え込んできたものの、最近の上昇で上限に近づき、再修正に追い込まれた格好だ。

 政策の修正を受けて、同日の長期金利は一時0.95%を上回る水準まで上昇した。米国の長期金利も上昇基調が続き、国内の長期金利も1%を超えるとの見方が強くなっている。

 気になるのは家計への影響だ。例えば、まず、長期金利が上がると住宅ローンの固定金利型の金利上昇が想定される。

 住宅ローンには、返済期間中、金利が変わらない「固定型」のほか、最初の10年など一定の期間の金利だけ固定する「固定期間選択型」や、年2回金利が見直される「変動型」がある。

 このうち、固定型は長期金利、変動型は短期金利にそれぞれ連動する。ファイナンシャルプランナーで「永続家計アドバイザー」の豊田眞弓さんは、次のように話す。

「国内で住宅ローンを借りている人の7割程度が、変動型を利用しています。その中には、いずれ金利が上がったら固定型に借り換えようと考えている人もいる。その場合、借り換え先として想定している固定型の金利のほうが、今利用している変動型に先駆けて上昇することになります。金利の動向しだいでは、あらかじめ想定していた借り換えができなくなるという事態も考えられます」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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