市民の声を受け、市長はついに…
会の向谷千鳥代表は、こう話す。
「水道事業がスタートした当時は、水道より井戸を使う人のほうが多く、受益者とそうでない人がはっきり分かれていました。しかし、今の日本で、水道を使わない人はまずいない。安心安全な水の提供は行政の基本的サービスととらえて、費用は自治体が負担すべきだと思います。岡山市の場合、今回の値上げでまかなう費用は年間35億円で、一般会計の1%。予算の優先順位を精査すれば、出せない額ではないはずです」
声をあげた成果は、着実に出ている。当初案で25.3%と示されていた値上げ率は、その後、平均20.6%に修正された。さらに9月に入ると、市長から「20.6%から少しでも下げられるよう考える」という旨の議会答弁を引き出した。
とはいえ、向谷代表は、値上げの阻止だけを目指しているわけではない。
「水道事業の収支改善が見込めない以上、この仕組みのままでは、値上げしか方法がありません。どうすれば、家計に負担をかけることなく、命の水を守れるのか、市民たちが議論を尽くす必要がある。この反対運動を、住民自治の運動にまでつなげたいと思っています」
では、「命の水」を守るための抜本的な解決策はあるのだろうか。
前出の橋本氏は「水道料金を大幅に上げる前に、できることはまだまだある」と力強く語る。
まず不可欠なのは、水道施設を減らすことだ。国内の施設のうち、実際に稼働しているのは約半分。不要な施設をたためば、そのぶん将来にわたって維持管理のコストが浮く。
実際、岩手中部水道企業団は2019年までに計25の施設を削減した結果、将来の投資額を89億円カットすることに成功している。また山間部などの過疎地では、殺菌した地下水を利用したり、給水車で水を運んだりと、水道管を使わない方法に切り替えて、維持費を抑えている例もあるという。