山崎貴(やまざき・たかし)/1964年、長野県生まれ。主な監督作に「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ、「永遠の0」「アルキメデスの大戦」など。監督・脚本・VFXを担当した「ゴジラ-1.0」が11月3日から全国公開(撮影/植田真紗美)

 世界的に人気のキャラクター、ゴジラの誕生70周年を記念する映画「ゴジラ-1.0」(ゴジラマイナスワン)が11月3日から公開される。山崎貴監督はゴジラ映画を「神事」と位置付ける。AERA 2023年10月30日号の記事より。

【写真】昔のゴジラは目がちがう?70年前の第1作目のゴジラがこちら

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──どんな経緯で監督を引き受けられたのですか。

 ずっとゴジラはやりたかったのです。「ALWAYS 続・三丁目の夕日」(2007年)にゲスト出演してもらったことがあるのですが、それが大変すぎてとても全編を満足のいくレベルで描くのは難しい、と一旦封印していました。

「シン・ゴジラ」(16年)も公開され、少しライバル心が燃えまして。技術的にも、思っているゴジラを作れる段階にきたので、満を持してやらせてもらいます、と。

──和製ゴジラ29作のうち、影響を受けたのは?

 圧倒的に1954年の1作目のゴジラです。人間ドラマとゴジラが離れていないところが本当に素晴らしい。本多猪四郎の実写と、円谷英二の特撮班が精緻を凝らして競い合っています。

現代の写し絵のように

 第五福竜丸が被曝するなど当時の不安な状況そのものが、ゴジラという姿でやってきたという作品だと思うので、今回もその精神を受け継ぎたい、と思いました。

 また、最近のきな臭さというか、世の中が戦争に向かって転がり落ちているという感じは意識しないといけないと思った。現代の写し絵のように、我々の抱える不安感がゴジラになってくるものなのかな、とも感じました。

 さらに、19年にオファーを受けて、企画を練っている間にコロナ禍が深刻化していった。政府はあてにならず、民間で何とかしなければならないなど、世の中に不安が広がった。そういうものが映画にも反映していると思います。

 だから、日本が危機になるとゴジラは作られるという気さえしました。「シン・ゴジラ」も東日本大震災の影響を受けている感じもしましたけど、今回も僕らが漠然と感じている不安がゴジラという形になってやってきているという感覚です。

──タイトルの「-1.0」の意味を改めて教えてください。

 敗戦下のゼロ状態の日本がさらにマイナス状態に追いやられる中、わずかなもので、人がどうやってゴジラに立ち向かうのか、という物語でもあるし、主人公が陥るマイナスワンの状態も示唆しています。初代ゴジラよりさらに前に戻るという意味もあります。

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