「ゴジラ-1.0」の撮影現場。台本を手に、戦争から生還した青年を演じる神木隆之介(左)と話をする山崎監督(写真:東宝提供)

──時代設定などはどのように決めていったのですか。

 オファーを受ける前から、ゴジラを作るなら、昭和の世界がいいなと思っていたんですよ。昭和の街に立っている時にこそゴジラは映えますし、戦争や核とか、あの時代の空気をまとっているのがゴジラだと個人的には思っていて。最初からあの時代に連れて行こうと思っていました。

──今回、主人公たちが絶望に絶望を重ねていきます。

 やっぱり、負け犬、ルーザーが好きなんですよ。負け犬が立ち上がる話が好きなんです。今回は復讐というネガティブな立ち上がりかもしれませんが、最初は地に落ちて、精神的にもボトムからスタートするのが好きな話の作り方です。

──血のつながりのない家族の愛も描かれますね。

 決して血のつながりだけでなく、お互いのことを思う集団があればそれは家族と思っています。一緒にいなきゃいけない人たちじゃないのに、一緒にいる。そうなると、非常に強い絆が逆に際立ちます。

意識した距離の「近さ」

──庶民の人間関係を描く中で、「閉じない輪」のようなものを感じます。

 きれいにちゃんちゃんと終わらない方が、映画的と思うんですよ。続編を作るということじゃなくて、お客さんの中で、映画のキャラクターたちが生き続けてもらうためでもあるんです。

──VFXの効果で「恐怖」そのものが近づいてくるようでした。

「近い」ですね。距離の近さは意識しました。デジタル合成技術を使う以上、今までと同じことをやっていてもだめです。かなり近くにゴジラがいるという絵を入れ込むように意識しました。

──一方で、昨春からの海上ロケでは、船酔いが大変だったといいますね。

 機雷処理船が出てくる場面は、デジタルではなく本当の海です。小さい船は、現場で撮ると、すごく現実感が出ます。ドキュメンタリー感を出すには海で苦労して撮った絵が効くんだよと、周囲の制止を振り払って海に出たのですが、海に出た瞬間に、僕が一番後悔しました。でも、行っただけのことはあったと思いますね。太陽の光、本当の海に翻弄される船、とてもVFXでは簡単にはいかない。

 それに、ゴジラの恐怖を現実化するのは、どんなにVFXで頑張っても、役者の芝居がちゃんとしていないとできません。みなさんの演技で、ゴジラがちゃんと召喚できたなと思います。

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