「人間は結構、気まぐれです。そういう年齢の子たちは、本当に小さいちょっとした気持ちのズレを、世界のすべてと感じてしまう。逃げ場の無い中で、いろんな気持ちがぶつかっているというのが、時にいじめになってしまったり、時に救いになったりもする。その瞬間だけの独特な空気は、この年代特有のものなのだと思います」

 山城亜子さんは、自分が悪口を言われていると気がついている。しかし淡々としていて、決してやり返そうとはしない。

「山城さんは、自分の現状を平然と俯瞰で見ています。自分で描きながらも、マンガのキャラクターの中には掴めないキャラがいるんですね。最後の話になるまで“どうしよう?”と、自分でも戸惑うことがあります。そういう思いはもしかしたら、読者に伝わっているのかもしれません」

『あことバンビ』は4コマで進んでいく。この理由は、WEBで描き始めたことが大きかったし、マンガのコマ割りは苦手だと話す。コマ割りは、本当にセンスがいる作業だという。マンガをスマホで読む人は多いが、HERO氏のマンガはスクロールして進めていくのに読みやすく、派手な動きもなく会話劇で進んでいくので、まるで小説を読んでいるかのような気分にもなる。

「SNSの台頭によって、よりマンガが読まれるようになりました。出版社がWEBサイトを立ち上げたということも影響が大きいですね。以前のWEBマンガは、個人が趣味で描いた作品を発表しているという認識でしたが、『週刊少年ジャンプ』や『週刊少年マガジン』に連載されているマンガもネットで読める。昔のようなアンダーグラウンド感は薄れていると思いますが、逆にそれがちょっと、寂しく感じることもあります」

 漫画家として1つ飛び抜けるには、努力が必要な時代になった。もっと読まれるには、ありきたりなストーリーではなく、違う視点や感性が必要となるだろう。そんな話を振ると、

「WEB上ではすでに、競争になってきています。マンガを描くのはすごく楽しいのですが、上手な人の絵を見てしまうと、苦しくなってくることもあります」

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今も自分が漫画家だと感じたこともあまりない