『あことバンビ』には、不思議な雰囲気を醸しだす編集者の比企景国(ひき・かげくに)やバンビの双子の兄姉(陸と華)、山城亜子の幼馴染の宿輪久志(すくわ・ひさし)、バンビの知り合いで霊能力者の入舟唄(いりふね・うた)など、個性的な登場人物が描かれる。さて、HERO氏の好きなキャラクターは?
「やっぱり主人公のアコです。私は、動きのある絵を描くのがちょっと苦手。アコはサイドテールという、アシンメトリーでちょっと頭を動かすと尻尾みたいに揺れる可愛い髪型なのですが、髪の毛の動きでいろんな感情が表現できるのがお気に入りです」
小鹿という名字の主人公だから、あだ名は「バンビ」。それは最初から考えていたのだろうか。キャラクターの名前を何にするのか、漫画家は毎回、悩むのだろうか。
「女の子が“バンビ”って呼ぶのが、ちょっと可愛いなって思っていて。やっぱり可愛い女の子が主人公なので、好きな人のことをそういうあだ名で呼んでほしいなと、個人的に思っていた部分はあります。私は地名から発想したり、珍しいけれど存在していなくもなかったりするような言葉から考えています」
好きなシーンは?と尋ねると「山城さんが、バンビの背中を自分のカバンで叩くところ(88話)」だという。心理的にも物理的にも、2人の距離として大事なシーンでもあり、たっぷりと間を取りつつ大切に描き上げた。
「人が嫌がることをしない」
「さよならだけが なければいいのに」、「朝が幸せだと このまま一生 幸せなんじゃないかと思う」、「たとえそこが 草木も生えない 荒廃した場所だったとしても それでも幸せが必ずあるような」。書籍の帯には人を優しく包み込むような言葉が並ぶ。
「普通に道を歩いているとき、もし今、隣にバンビがいたら私はどういう話をするのかな? 一緒に電車に乗ったとして、目の前にバンビがいたらどんな感じなんだろう? 主人公たちとはいろんな思いをめぐらせますし、『あことバンビ』は、そんな妄想を連載終了まで続けていた作品です。本当は全部のキャラクターで想像ごっこをしたいのですが……」