韓流グッズや韓国コスメの店が軒を連ねるJR新大久保駅前=東京都新宿区

 しかし、蜜月は長く続かなかった。ドラマの値段が急騰して日本の配給会社が手を挙げにくくなるなか、2012年8月の李明博大統領(当時)の竹島上陸を機に高まった嫌韓ムードがブームの冷却に追い打ちをかけた。広告や地上波のテレビから韓流スターの姿が消えていく。その頃、日本の映画配給会社の担当者から、こう聞いたことがある。

「プロモーションとして韓国の大物俳優の出演をテレビ局に提案したが、『今は難しい』と断られた」

Z世代から自然発生

 韓流もついに終わりか。業界関係者がため息をつくなか、第3の波は意外なところからやってきた。新世代ギャルのためのファッション誌「JELLY」(ぶんか社)が「今オシャレなコが注目している!“韓国っぽスタイル”をはじめよう!」を企画したのは2016年夏のこと。「S Cawaii!」(主婦の友社)や「ViVi」(講談社)も「美容大国のホンキ! 韓国ガールは自分盛りの天才!」や、「白くてつるんとキメ細やか(ハート) 韓国女子みたいな陶器肌はミルフィーユ塗りで作る!」といった特集を組み始めたのだ。

「メイクを始めた高校1年生の頃からコスメは韓国製。アイドルが使うコスメを調べたり、韓国のユーチューバーのメイク動画を見たりしながら自然と使い始めた」というのは、出井希さん(21)だ。

「K-POPの動画はYouTubeで見るし、高校の時から情報源はTwitter」という、幼い頃からテレビよりもSNSが身近な、いわゆる「デジタルネイティブ」のZ世代。第3次ブームがこれまでと違うのは、テレビが火付け役になったのではなく、自然発生的に広まっていったことだろう。

 マスコミがスターを起用しなくても、K-POPの人気は底堅かった。年間のK-POPライブ回数(コンサートプロモーターズ協会調べ)は、2012年は462回だったのが、14年は919回と増加。「日経エンタテインメント!」が算出した「コンサート動員力ランキング」では、16年にBIGBANG、18年に東方神起がそれぞれ1位になった。若者たちが手のひらの中でひそかに視聴しじわじわと拡散していた韓国のコスメやファッション、K-POPが、TWICEやBTSのブレークなどの新たなうねりによって可視化され、大人がやっと気づいたという構図だ。

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