ドラマや音楽だけでなく、韓国のエンターテインメントはコスメや食文化など日本の生活にあらゆる場面で韓流ブームを巻き起こしている。ブームの原点となったドラマから、K-POPへの流れを振り返る。AERA2023年10月30日号より。
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韓流ブームの原点、ドラマ「冬のソナタ」から火が付いた第1次ブームは2006年に市場のバランスが崩れ、潮目が変わった。
次なる波が可視化されたのは2010年。日経MJ「ヒット商品番付」で「K-POP」が前頭に選ばれた。ブームを牽引したのは、同年に日本デビューした少女時代とKARAだった。
ガールズグループが好きなのは男性という定説を覆し、ファンの多くは若い女性たち。福岡ソフトバンクホークスのチアリーダーだった橋本祐里さん(34)は、YouTubeで偶然目にしたKARAの「Jumping」のミュージックビデオに衝撃を受けたという。
「女性らしさの中にもカッコよさ、カリスマ性がある。がむしゃらに踊るのではなく、その人の良さをきれいに見せるダンスに惹かれました」
チアリーディングやヒップホップとは違う、K-POPに憧れた。踊ってみたくなった。その年のとある忘年会の余興で「Jumping」を披露すると大ウケし、別のイベントにも声がかかるようになる。ボランティアで各地のイベントに出かけてスポットライトを浴びながら踊る、K-POPのカバーダンスが、ダンサーとして自分のなかでひとつのアイデンティティーとなった。
第2次韓流ブームはK-POPに象徴される「憧れ」と同時に、韓国がぐっと身近になった時期でもある。ドラマの世界では、グンちゃんことチャン・グンソク主演の「美男〈イケメン〉ですね」が大ヒット。自ら「アジアのプリンス」と称するオレ様キャラのグンちゃんは、巧みな日本語を武器に「笑っていいとも!」「徹子の部屋」など日本のバラエティー番組にも出演。コンビニのローソンの年間広告モデルにも起用され、店内には彼の低音ボイスのアナウンスが流れた。韓国発のラブコメディーが一世を風靡し、フジテレビや日本テレビ、TBSなどキー局に設けられた韓国ドラマ枠で、毎日のように韓国ドラマがオンエア。2011年のNHK紅白歌合戦には、東方神起、少女時代、KARAが参加。お茶の間に、街中に、韓流があふれていた。