ジェンダーギャップの激しい社会では、言うまでもなく女性に対するエイジズムはあからさまだ。特に日本は、女性に幼稚さを求め続けてきた。高い声や、幼い歩き方や仕草、たどたどしい喋り方をする成人女性の多さは、エイジズムと性差別の結果だろう。また、私自身もやってしまったことではあるけれど、40歳になった女性たちが何故か一斉に「40歳になったこと(おばさんになったアピール)」を大げさに語り出すような感じも、エイジズムの裏返しに見える。ええ、私はおばさんですよ、若作りなんてかっこわるいことしません、年相応に生きますよ! というアピールに見えるからかもしれない。年齢なんて関係なくていいのに。自分が自分であればいいだけなのに。そういう意味で、「私が決めた年齢で生きる」と就籍までする女性のほうが過激で自由……ともいえる。

 この女性は1951年生まれと報じられる。72歳卯年、年女である。架空の48歳になるということは、干支は同じ卯にこだわったのだろう。1951年といえば、ベビーブームが一段落ついた世代で、一つ年下には小柳ルミ子がいる。小柳ルミ子といえば、日本のエイジズムと女性差別の犠牲者である。1989年に13歳年下の大澄賢也と結婚し「狂ったのか!?」とイロモノ扱いされ、小柳ルミ子の仕事は状況が変わった。当時、小柳ルミ子はまだ36歳だったのに。36歳の女が13歳年下の男と結婚したって、今は誰も驚かないだろうが、当時は非難されるようなことだった。そのくらい、常に女性は年齢を意識させられ、何か制限があるような気分を強いる空気が日本にはあった。逮捕された女は、そういう世代に生まれ、そういう時代を生きてきたのだ。

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国をだましてでも「若く見られたい」