アジア人特有の「口内調味」という食べ方

 こう話すのは、味覚分析を手がける「味香り戦略研究所」(東京)の高橋貴洋・主任研究員だ。

 高橋さんは「分ける派」だが、同研究所の職員らにクリームシチューをどう食べているか聞いたところ、半々に分かれたという。

 人はいったい何をおいしいと感じるのか。まずそのヒントを。

 高橋さんによると、日本人がおいしいと感じる塩分濃度は0・8パーセント前後。お吸い物での実験結果だそうだ。

「人の体液の塩分濃度と、ほぼ同じ数値です」(高橋さん)

ただし、おかずは0・8パーセントより高いものが多いという。

 そこでポイントになるのが「口内調味」と呼ばれる食べ方。複数の食べ物を口に入れ、かむことで生まれる味の変化を楽しむ、日本人が古くから慣れ親しんできた食べ方のことだ。

「アジアの人に特徴的な食べ方で、おかずとご飯を一緒に食べることで、自分がおいしいと感じる塩分濃度に調節しているのです」(高橋さん)。

 梅干しや漬物は、その典型的な食べ物と言え、ご飯が欲しくなる理由はそこにある。

 クリームシチューをかける派の人も、それぞれが自分流の「口内調味」を楽しんでいるのだという。

「作りたてのクリームシチューはさらさらしていて塩分濃度が低い。その段階ではご飯には合いにくいかもしれませんが、一晩寝かせるなどして濃縮すれば、ご飯にちょうどいい味わいになるとも考えられます」

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味覚は環境に左右される