井戸まさえさん(いど・まさえ)/1965年、宮城県生まれ。元衆議院議員。東京女子大学・関西学院大学非常勤講師。著書に『無戸籍の日本人』ほか(写真:本人提供)
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 史上初の八冠制覇を達成した藤井聡太八冠のニュースを受けて、各界の愛好家はいま、何を思っているのか。観戦専門「観る将」のジャーナリストで元衆議院議員の井戸まさえさんに聞いた。AERA 2023年10月23日号より。

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 王座戦第4局は、死闘と呼びたいくらいのドラマチックな展開で興奮しました。

 私は観戦専門の「観る将」です。熱心にネット観戦をするようになったのは、藤井聡太さんが頭角を現してから。将棋のルールや用語を少しずつ覚え、今は観戦のポイントがわかるようになってきたところです。

 将棋に惹かれる一番の理由は、棋士個人の実力のみで勝負が決まることです。積み重ねてきた努力や1局に賭ける集中力、粘り強さがそのまま結果に出る。

 私が属する政治の世界は、いまだ二世議員の比率も高く、個人の力だけでは当選もポジションを得るのも難しい。実力だけで評価されるとは言い難いです。しかも、潔く負けを認めない世界。だからこそ、年齢も出自も関係なく、強い棋士だけが勝つ。その潔さ、清々しさに憧れます。

 将棋界がファンの裾野を広げるために、新メディアと組みネット観戦に力を入れたり、将棋会館の建て替えにクラウドファンディングを活用しているところにも注目しています。

 私が将棋を面白く観ることができているのも、ABEMAが対局を中継したり、YouTubeで見逃した対局や解説動画を見られることが大きいです。「観る将」の存在はこうしたイノベーションの支えがあってこそとも言えます。とくに棋士の方たちの「将棋愛」に満ちた解説、論評がいいんです。加藤一二三さんの藤井評には「天才が天才を語るってこういうことなんだ」と感動します。渡辺明さんは名人戦で負けたあとも自虐も入れながら初心者にもわかりやすく解説されていました。強い人の解説はレベルが違うとも感じます。真剣勝負の世界で生きている人たちだからこそ、自分の血肉を削った言葉が出てくるのでしょうし、人の心を動かす力がある。

 そんな多くの棋士の姿に、私は人生を教えられ、勇気づけられています。なかなか当たらないんですけど、いつか必ず会場観戦してみたいです。

(構成/ライター・角田奈穂子)

AERA 2023年10月23日号