他を圧倒し続けた大山
大山は数々の記録を打ち立てた。その中でも特に驚異的なのは、57年の名人戦から67年の十段戦(竜王戦の前身)まで10年にわたり、連続で50回もタイトル戦に出続けたこと。藤井聡太でさえ、現在行われている竜王戦で連続9回目。いかに大山が長期にわたって他を圧倒してきたかわかる。
三大タイトル時代から五大タイトル時代のタイトル独占は、のべで7年を超える。タイトル独占を1年以上続けたのは現時点で大山のみ。また、タイトル失冠後に取り返して再度全冠制覇したのも大山だけの記録だ。五冠独占を計4回も成し遂げている。
五冠王の大山からタイトルを獲得して世代交代を果たしたのは中原誠である。72年に24歳の若さで名人を獲得し、大山に代わって第一人者となった。73年に名人・十段・王将・王位の四冠王となる。タイトル独占を期待されたが、棋聖戦でなかなか挑戦者になれず、75年に六つめのタイトル戦である棋王戦が新設された。
77年度に中原はついに棋聖戦と棋王戦で挑戦を果たす。棋聖を獲得して残すは棋王のみ。ところが、当時の棋王保持者である加藤一二三に3連敗で敗退した。その後、翌年度の王将戦で中原は加藤に敗れて失冠すると、五冠王にも戻れず、全冠独占のチャンスは訪れなかった。(ライター・君島俊介)
※AERA 2023年10月23日号より抜粋