聞くインプットに効果的なタイピング
一方で、授業中やプレゼンなど、人の話を聞きながらの手書きには、少々注意が必要です。
講義というのは、自分のペースで人の話を止めたり再開させたりはできません。ですから、話を聞きながら、メモを取らなくてはいけない。
これがワーキングメモリーには負担が大きいわけです。先生の話が難しい、プレゼンの内容が複雑。そんな時に、手を動かしての「ながら作業」をしていてはワーキングメモリーがパンクしてしまい、理解できるものも理解できなくなったりします。
学校の授業では、先生の話や板書を手書きでノートにメモしていた人が多いと思いますが、実は、脳科学的には考えものなのです。
ですから、教えるのが上手な先生たちは、
「手を止めて聞いてください。聞いてから、ノートに取ってね」
と、聞く時間と書く時間をしっかり分けてくれていたのです。その方が学習には効果的だからです。
一方、授業やプレゼンなどで人の話を聞いている時には、タイピングが効果的です。
もちろん、タイピング慣れしていることが前提ですが、パソコンやタブレットでタイピングをする方が、手書きよりも断然速くメモを取ることができます。だいたい平均で2〜3倍くらいの速さの違いがあると言われています。
さらにスマホでは、「フリック入力」などの異なる入力方法があります。慣れてくれば、キーボードでのタイピングよりも速く入力することが可能です。
もちろん、キーボードやスマホ入力が苦手で、長年の手書きで速度もなかなか速い、というような人は、手書きの方が負荷がかかりにくいということもあるので、これまでの習慣を無理して変える必要はないでしょう。
しかし、速度と脳への効率から見れば、聞いている時はタイピングに分があるのです。
タイピングなどのデジタル入力には、脳のエンゲージメントの効果以外にも、記録の面でメリットがあることも忘れてはいけません。
スレッドや見出しをうまく使って、あとからメモにアクセスしやすいように保存できたり、キーワードで検索することだってできる。
手書きのノートをうまく使うことも可能ですが、長年にわたる記録やメモの量が多い場合には、やはり限界もあるわけです。
デジタル化によるインプット情報の保存とアクセスの効果も、これからは考えておくことが必要かもしれません。