今年9月、国の特別記念物である「カンムリワシ」が沖縄県の石垣市を訴えるという珍しい訴訟が提起された。石垣島での大規模なゴルフリゾート開発の見直しを求めた訴状を見ると、原告として、地元住民らのほかに「沖縄県石垣市石垣市民の森公園内 カンムリワシ」と記されている。実は、原告側の籠橋隆明弁護士は、1995年にもアマミノクロウサギなど奄美大島の希少動物たちを原告に加えた前代未聞の訴訟を手がけ、大きな注目を集めた人物。今回再び動物の弁護人を務める籠橋氏に、その狙いと、勝訴のための“作戦”を聞いた。
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――ゴルフ場開発の是非をめぐる、95年の「奄美『自然の権利』訴訟」(以後、アマミノクロウサギ訴訟)は、日本で初めて動物を原告にした裁判です。なぜそのような異例の形をとったのですか?
最初の意図は、動物が人間と闘うという“ストーリー性”を持たせた、いわば話題作りです。しかも当時は、自然に対する危機感が高まりつつあった時代。ジブリ作品でみると、「となりのトトロ」(88年)と「もののけ姫」(97年)の間の時期で、92年にはメダカが絶滅危惧種になったばかりでした。高度経済成長期の後も自然開発が進み、いよいよ危ないぞという機運がただよう中、アマミノクロウサギ訴訟は沸騰石のように作用して、メディアでも大きく取り上げられました。