カンムリワシ(提供:愛鳥家 中本純市さん)

まるでバブル経済の亡霊

――開発推進派から寄せられるであろう、「カンムリワシが大事なのか、人間が大事なのか」という問いへの籠橋さんの答えは?

 ワシを大事にすることが人を大事にすることだと考えています。なので、問いの立て方がそもそも間違っていて、正しくは「われわれが一時的な享楽をとるのか、長期的な利益をとるのか」です。

 石垣にとって、自然は重要な資源です。沖縄本島が開発されつくした結果、自然を求める観光客が石垣をはじめ周辺の離島に移っていったことが、いい例でしょう。今回のリゾート計画は、「人がたくさん来れば経済効果が上がるんだ」という非常に単純な理屈で考えられた、まるでバブル経済の亡霊がよみがえったような開発だと感じます。

――アマミノクロウサギ訴訟から約30年を経た今回の裁判ですが、勝訴への手応えは?

 インターネットの発達によって、当時よりも圧倒的に戦いやすくなりました。かつては“声なき声”として黙殺されていた人たちが自由に意見を言えるようになり、集会には参加できなくてもクラウドファンディングで協力してくれるなど、多くの支援が届いています。

 アマミノクロウサギ訴訟は、請求自体は却下されましたが、多くの支援者が現れたことで最終的にゴルフ場開発が頓挫しました。情報は社会を動かすことができるし、世論の力は本当に大きいと確信しています。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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