籠橋隆明弁護士(本人提供)

自然にも「生きる権利」がある

――しかし、動物を原告にすることは認められず、鹿児島地裁から訴状の訂正を求められました。

 法改正をしない限り、人間以外を原告に加えることに無理があるのは理解できます。ただ、原告から動物を外して、地元住民による訴えという形に修正しても、結果的に請求自体が却下されました。

 人間と同じように、自然にも生きる権利があるという考え方を「自然の権利」といいますが、日本において、人が自然の権利を代弁して訴訟を起こすハードルはものすごく高い。最大のネックは、「自然は誰のものでもないから、あなたに裁判を起こす権利はない」という考え方ですね。裏を返せば、「自然は誰のものでもあるから、誰でも裁判を起こせる」と考えてもいいのに、そうはならない。今も議論は深まっていません。

 自然はその地域に住む人に、経済的にも文化的にも大きな利益をもたらすもの。アメリカでは、自然から受ける利益が個人的な利益として認められているので、簡単に裁判を起こせます。さらにESA(絶滅の危機にひんする種の保存に関する法律)のように、自然環境を守るためにダムなどの大規模開発でも止めてしまう強力な法律もあるなか、日本では自然保護に関する法整備が著しく遅れていると感じます。

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