このようなときの治療法として、「ブリッジ」があります。ブリッジは失った歯の両隣に残っている歯を削って冠をかぶせ、連結した人工の歯を固定する治療です。歯周病の場合は、歯槽骨が残りわずかで、保存不可能な歯を抜いて、ブリッジをおこないます。ただし、歯周病が進行している場合はブリッジを連結する健康な歯が少ないことが多いので、上顎あるいは下顎のすべての歯を土台にして全体を覆うようなU字形のブリッジが必要になることがあります。

 ブリッジには人工の歯を使います。人工の歯となる補綴(ほてつ)物にセラミックなどの白い歯を使う場合は、自費となり、費用は1本あたり約10万〜20万円。U字形のブリッジだと残った歯のすべてにセラミックをかぶせることになります。歯は上下トータルで28~32本(親知らずがすべて生えそろっている場合)ですから、例えば28本のすべてに補綴物を使うと約280万円となります。補綴物の金額が1本15万~20万円という歯科医院もありますから、その場合は420万~560万円です。

新書『やっぱり大切!「かめる幸せ」をとり戻す』(著・日本口腔インプラント学会)より

 もちろん、最初からすべての歯に補綴物が必要とわかっているわけではなく、歯周病の進行が止められれば、治療する歯の分だけの費用になります。一方、進行を止められずに治療する歯が増えていくと、U字形のブリッジのように治療費も高額になってしまうことになります。これが歯周病の治療費が高額になってしまう理由でしょう。

 また、重度の歯周病の患者さんはグラグラの歯が前後、左右に移動してさまざまな方向に向いてしまっていて、上下の歯がかみ合わなくなっていることがよくあります。このような状況を「歯がボロボロ」「歯がガタガタ」などと患者さんは表現するようですが、かみ合わせが崩れているとブリッジがはまらないので、このような場合は先に矯正治療で歯を元の位置に戻す処置が必要です。また、歯周病で歯根が露出した歯があると神経が近いため、そのままにしておくと熱いものや冷たいものがしみたり、痛んだりします。このような歯にはブリッジをする前に神経の処置が必要になるため、さらにお金がかかります。

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グラグラする歯を抜いて「インプラントにする」という治療も