男性がこころの不調に陥るとき、その理由は身体的な疾患、経済的な課題、職場などにおける人間関係が多いとされているが、女性の場合は、仕事の悩みはもちろん、義両親やパートナー・子どもとの関係性、そこにかかわる経済的な課題、繋がりの問題、それぞれの健康問題、そして自身の健康課題など、男性が女性にほぼ一任してきた日常生活に近い課題が多く挙げられる。医学博士・産婦人科専門医の高尾美穂氏は、自身の音声番組「高尾美穂からのリアルボイス」で、診察室では受け止めきれない多くの女性のリアルな悩みに触れてきた。同氏の新著『娘と話す、からだ・こころ・性のこと』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し、揺らぎが大きい女性のからだとこころについて紹介する。
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子どもの思春期と母の更年期、重なる家庭が増えています
産婦人科には、さまざまな女性がいらっしゃいます。私はこれまで、10代から閉経後の方まで、もちろん妊婦さんも含め、女性のあらゆるライフステージに医療の側面からかかわってきました。
この数十年で、女性のライフコースは大きく変化しました。一番大きな変化は出産年齢です。
以前、小学校のPTAの講演中に気づいたことがありました。小学生のお母さんといえば、すごく若い方だというイメージを持っていたのですが、最近はアラフォーで出産する方もめずらしくありません。仮に35歳で産んだとすると、子どもが小学校高学年になるころ、お母さんは40代後半なんですよね。