高校生になり、別の目標ができたことで男性はジャニーズ事務所をやめた。一緒に夢を追っていた仲間たちとも、少しずつ関係は疎遠になっていった。「性被害」を打ち明けた同期の少年の「その後」もわからなくなった。
仲間たちの「告白」
20代後半になって、男性は飲食店を始めた。開店の話を聞きつけた当時の仲間が、顔を出してくれるようになった。なかには毎月、遊びに来てくれる人もいる。
今年3月、英BBCがジャニー喜多川氏による性加害について報道し、日本のメディアも取り上げるようになると、店に集まる仲間たちとの間でも話題に上がるようになった。
そのなかで、自身の「性被害」について語った人がいた。当時、そのことを知りながら、事務所で活動していた人もいた。
「本当にあったんだ」
男性は、ジャニーズ事務所に所属していた当時のことを、あらためて思い返す。
「世間一般的にみれば、ジャニーさんがしてきたことは超悪い」
と男性は言う。しかし、
「ただ、僕らにとっては家族のようなもので、親のようなもの」
と、ジャニー喜多川氏に対する複雑な思いも抱いている。
仲間の一人が、「性被害」を受けたことについて、
「親にレイプされたようなもので、情や恩がありつつ許せないという対立した感情の間に立たされている」
と語っていた。彼はこう漏らしていたという。
「ジャニーさんのことを、憎たらしいという一つの言葉では片付けられない」