AERA 2023年10月9日号

「前代未聞ですし、地方公共団体の権能について定めた憲法第94条や地方公務員法に反するでしょう。公務員をたたく風潮に迎合した、感情を優先した政策になっているのではないかと危惧しています」

 こうした事例が続けば公務員は萎縮し、ミスの隠蔽(いんぺい)にもつながりかねない。プールの水の流出のような事故で50%の賠償責任を負わせることも含めて、行政側が「公務員が身を切っておけば安心」という意識になりすぎているのではないかという。

「誰でもミスはしますし、特に教員は年々労働環境が過酷になっています。そのうえ一度のミスで月給がまるまる飛んでいくような賠償請求をされるとなれば、なり手不足はより深刻化するでしょう。仮に賠償請求するとしても、10%や20%程度が妥当。それで法的な問題はない場合が多いと考えます」(平さん)

 もちろん、故意犯や法令に違反するような対応には厳しく対処すべきだろう。一方、悪意のないミスで生じた金銭的な損失に対し、どこまで個人の責任を問う必要があるのか。働きやすく、生きやすい社会のためにも、一度立ち止まって考えたい。(編集部・川口穣)

AERA 2023年10月9日号より抜粋

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