竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 読者の皆さんの中にも、「チャットGPT」など生成AIをすでに活用されている方は多いと思います。

 生成AI、私としては「あっという間にここまで進化してきた感」が強いです。

 人間が考えて想像できることは、本当に現実になってくるんだな。ここから先は、私の想像をはるかに超えた5年後、10年後がやってくるに違いない。そう感じています。

 人類が経験したことはすべて生成AIがのみ込み、解釈し、人間が考えるように答えを出していくとしたら、人はどういうところに自分の価値を見いだしていくのか。人間との差はどこに出てくるんだろう、と思います。

 ほとんどの人が「考えなくてもいい」生活を送らざるを得なくなるとしたら、人間の心の豊かさってどうなっていくのかな、とも考えます。

急速に普及していくチャットGPTのロゴ(写真:ロイター)

 この流れはもう、止めることはできません。私たちは数年後に向けて新しいシステムを構築していますが、いま5、6年後のことを考えても、そのときにはもう陳腐化してしまっているかもしれない。変化のスピードがとんでもなく速いんです。

 たとえば、店頭に生成AIがあればもう、「こういうときは笑顔で」「こういうときはこうおわびの言葉を」など、お客様との対応はすべて生成AIで解決する時代になるかもしれません。一方で、人間同士のコミュニケーションを大切にしていきたい、という想いもあります。

「5年後、私たちローソンのお店はどうなっているんだろう」。本当によくよく考えないと怖いなとも感じます。

 一方、「どう変わっていくんだろう」と楽しみに思う気持ちももちろんあります。

 生成AIに、置いていかれないように、ワクワク感を持ちながら、「お客様をハッピーにするお店作り」を考えていかなきゃいけないなと思いますね。

◎竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

AERA 2023年10月9日号