※写真はイメージです(写真/Getty Images)

イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国々で長年食べられている地中海食は、健康にいい食事とされてきましたが、健康だけでなく「若さ」にも関係しているという研究結果が出てきました。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が、最新の研究結果をもとに解説します。

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 海外旅行が好きな人や健康意識が高い人は、「地中海食」を知っているのではないでしょうか? 地中海食は、イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国々で長年食べられている伝統的な料理です。具体的には、オリーブオイル、魚介類、野菜、果物、豆などを主体とした食事で、オメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。近頃、こういった食事が健康だけでなく、遺伝子の「若さ」にも関係していることが新たに明らかになってきました。

「遺伝子の若さ」については研究がかなり進んでいます。「エイジングクロック」と呼ばれるもので、生物学的な年齢のことを指します。エイジングクロックは、遺伝子のメチル化パターンや転写レベルの変化、そしてたんぱく質や代謝物の状態を調べることで、実際の生物学的な年齢を推測します。なかでも「ホルバスの時計」というモデルは、DNAメチル化のパターンを基に、非常に高い精度で生物学的な年齢を予測することができます。

 120人の高齢者(イタリアとポーランドの人々)を対象にした最近の研究では、1年間地中海食を取り入れることで、エイジングクロックが示す「エピジェネティック年齢」が、実際の年齢よりも若返ったことが確認されました。特に、ポーランド出身の女性や、研究開始時に年齢が高かった人々には、その効果が顕著でした(文献)。

近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師

 心臓病のリスクを減少させるオメガ3脂肪酸、体の酸化を抑制する抗酸化物質、血糖値の急上昇を防ぐ低GI食材、そして心臓病予防に役立つポリフェノールを含む赤ワインの摂取など、地中海食の持つ健康的な要素が、遺伝子の「若さ」を保つ一因となっている可能性が考えられます。

 気になるのが私たちの身近な「日本食」です。実は、日本食もまた、健康や老化に対して良い影響をもたらす食事として、注目されています。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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日本食は心臓病のリスクを低減するといわれている