さらに2021年に映画『Ribbon」を発表。「おちをつけなんせ」と同じく、監督、主演、脚本、衣裳、美術、撮影、照明、音楽、編集まで手がけた作品だ。二つの作品に共通しているのは、表現欲求を抱えた若い女性が、殻を破って自分らしく生きようとするストーリー。
「『Ribbon』は“映画館で上映する長編映画を作る”と決めていたんです。なので“どうやってエンタメにしようか”“どんなメッセージを込めたらいいだろう”ということにかなり頭を悩ませました。『おちをつけなんせ』もそうですけど、『Ribbon』も“女の子が一歩踏み出す”物語です。何をすればいいんだろう?と悩んでいた主人公が、モヤモヤを自分の力で取っ払って、がんばるぞ!と決心する。そういう話が好きなんです」
「Non」と言える人でありたい
俳優、映画制作と並行して、音楽活動も継続。今年6月にはセカンドアルバム『PURSUE』をリリース。後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、堀込泰行、ヒグチアイなどが参加した本作は、彼女自身の20代を詰め込んだ作品だとか。
「今年は30歳になる年だったこともあって、自分の20代を凝縮したアルバムにしようと決めて制作に入りました。『PURSUE(パーシュー)』(追求する、求める)というタイトル通り、追求しまくった20代だったと思いますね。音楽レーベルを作ったり、絵を描いたり、ブランドを立ち上げたり。役者としても、映画「さかなのこ」では男の子(さかなクン)の役に挑戦したことが大きかったです。シリアスになり過ぎず、楽しく、軽やかに活動していけたらいいなと思ってますね」
“のん”という名前は、「Nonと言える人」「Nonを叩きつける人」という意味合いを込めて付けたという。日本のエンターテインメントの常識の枠を超え、映画、音楽、ファッション、アートなど幅広い分野で創造性を発揮している彼女は、これからも“Non!”を叩きつけながら楽しさと刺激に溢れた作品を生み出すことになりそうだ。
「自分の意見のない場所が苦手なんです。自分でプロジェクトを動かすスタイルが合っていると思うし、責任の所在が自分にある状態がしっくりくるんですよね。もちろん“Yes”も言いますけど(笑)、“Non”と言えない人にはなりたくない。そのうえで、好きなことを続けていきたいなと思ってます」
(森 朋之)