リブロ池袋本店の閉店が決まるなど、全国各地で書店の閉店が相次いでいる。現在放映中のテレビドラマ「戦う!書店ガール」の原作である碧野圭『書店ガール』も、そういえば閉店がからんだお話だった。
 新婚書店員・小幡亜紀(27歳)と独身のやり手店長・西岡理子(40歳)が活躍する『書店ガール』の単行本時のタイトルは『ブックストア・ウォーズ』(2007年)。当時、読んだときには「もう一押しかな」と思ったが、いつのまにかこの本は『書店ガール』としてパワーアップし、文庫書き下ろしの人気シリーズに成長していた。
 とはいえ亜紀も理子もすでにベテラン書店員。新刊の『書店ガール4』は主役をもうひとつ下の世代に移した初々しい書店員小説だ。
 舞台はこれまでと同じ吉祥寺。大手書店でバイトをしながら就活中の女子大生・高梨愛奈(20歳)と、駅ビル書店の契約社員から正社員に昇格したはいいが茨城県取手市という未知の土地でいきなり店長にといわれて戸惑う宮崎彩加(24歳)を中心に物語は展開する。
 大学の仲間たちは身も蓋もない。〈愛奈、まだ書店業界に就職したいと思ってるの?〉〈えっ、本気?〉〈書店業界こそ斜陽産業だしなあ〉。他方、〈好きな本の話をしてもみんなには通じない。逆に根暗と思われて、引かれるだろう。だから、本好きであることをみんなに言う気はなかった〉と悟りの境地にある愛奈。
 さよう、いまや本好きの若者たちは隠れキリシタンみたいにこっそり本を読んでいるのである。でも、隠れだからこそ尊敬もされるわけで。〈なんかさ、俺らとちょっと感覚が違うってか。損得で動いてない感じなんだよね〉とは愛奈がバイト先で企画した「就活フェア」を見に来た男子学生の高梨愛奈評。〈せっかくだから、何か選んでくれない?〉。なにそれ、新手の口説き文句?
 この本が人気シリーズになったのも書店員さんたちの後押しがあったせいかもしれない。すばらしい。

週刊朝日 2015年5月29日号