副業は長時間労働につながり、体を壊すなど健康面でのリスクも指摘されている(撮影/写真映像部・馬場岳人)

 低収入にあえぎ、生活のために副業をせざるを得ないシングルマザーは少なくない。昼間は社会福祉施設の職員、夜は派遣型風俗で働く40代女性の実情を追った。AERA 2023年10月2日号より。

【図表】青天井に稼げる副業がこちら!

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 夜9時過ぎ。東日本に住む40代の女性は車を運転し、市内にあるビルに向かう。ビルの一室は、派遣型風俗(デリヘル)の待機場所。そこで時間をつぶしながら、「オーダー」が入るのを待つ。オーダーが入れば、ドライバーの車で指定されたホテルなどに向かう。こうして、翌午前1時ごろまで働く。

「いくら体がボロボロになろうが、子どもたちのために働こうと、思っています」

 4人の子どもを育てるシングルマザー。「副業」として風俗で働き始めたのは15年ほど前だ。夫のDVが原因で離婚し、昼間はパートで働き始めた。だが、給与は最低賃金。4人の子どもを育てるだけの収入はない。そんなとき地元のフリーペーパーで「好きな時間に働け、頑張り次第で高収入も」という広告を見つけた。面接時に、デリヘルや風俗という仕事があることを初めて知った。抵抗があったが、生きていくために働くことに決めた。

子どもたちのために

 昼間の仕事が終わるといったん家に帰り、子どもたちにご飯を食べさせた後、出勤する。子どもたちには「皿洗いのバイトに行ってくる」と言って出かける。いまも子どもたちは、母親が本当は夜に何の仕事をしているか知らないという。

 いま女性は昼間、社会福祉施設の職員として働く。正規と非正規の中間的な扱いとされる「準職員」で、収入は週5日フルタイムで働いても、手取りで月16万円ほどだ。

 昼間の仕事でくたくたで、最近は片頭痛がひどい。それでも、体力に余裕がある時は風俗で働く。風俗の仕事は、性病や感染症の危険とも隣り合わせで怖い。客からストーカー行為に遭ったこともあるという。

 他にも女性は、スナックで月に1度は働き、休日は家事代行の仕事もする。こうして三つの仕事を掛け持ちし、収入は月に計7万~8万円。心身を削っても頑張れるのは、子どもたちの存在があるからだ。4人の子どものうち3人が三つ子で、いま高校3年生。全員が大学への進学を希望している。女性は言う。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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