夏井いつきさんと奥田瑛二さん
夏井いつきさん《(c)sakura goto》と奥田瑛二さん《(c)Daisuke Miura (go relax E more)》

 瀬戸内寂聴さんとの出会いをきっかけに俳句を始め、「寂明」という俳号まで授かった俳優の奥田瑛二さん。正岡子規について夏井いつきさんと語った『よもだ俳人子規の艶』(朝日新書)では、売れない俳優時代の話に。自分の中に引きこもることの大切さとともに、俳句との共通点を分析。本書から一部を抜粋、再編集し、紹介する。

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夏井:奥田さんには三つの名前があるわけだけど。本名の「安藤豊明」さんと、「寂明」さんと、そして芸名の「奥田瑛二」さん。

 この中で、芸名の「奥田瑛二」とは、安藤さんにとってどういう存在なの?

奥田:「奥田瑛二」の名は、僕にとって弾道ミサイルみたいなもので、一番エネルギッシュで、どこにでも容赦なく飛んでいける装置かな。

夏井:え、弾道ミサイルってそういうものだった?

奥田:いえ、違います(笑)。ちゃんとした弾道ミサイルは、予め設定した地点を目指すんだけど、僕のミサイルは縦横無尽に飛んでいくようなイメージ。現世の森羅万象の中で、「奥田瑛二、一号」がずっと空を飛びまわっている。

夏井:ちなみに「奥田瑛二」の芸名はどうやって決めたの?

奥田:これも人から授けられて。

夏井:奥田さんは授けられる人生なんだ。他にも授けられたものが多そうだけど(笑)。

奥田:ええ、家も妻に授けられました(笑)。若い頃から俳優を目指すも、不遇時代はホームレス状態で、妻に出会って救われたんです。

夏井:奥様の惚気話が始まりそう……(笑)。

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夏井いつき

夏井いつき

夏井いつき(なつい・いつき) 1957年愛媛県生まれ。俳人。俳句集団「いつき組」組長。8年間の中学校国語教師を経て俳人へ転身。94年「第8回俳壇賞」、2000年「第5回中新田俳句大賞」受賞。創作活動に加え、「句会ライブ」や講演など、俳句の種まき運動の傍ら、MBS「プレバト!!」など各メディアで幅広く活躍。15年より初代俳都松山大使。主な著書に、『句集 伊月集 鶴』『夏井いつきのおウチde俳句』(共に朝日出版社)、『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)、『子規365日』(朝日文庫)、『瓢簞から人生』(小学館)など。

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奥田瑛二

奥田瑛二

奥田瑛二(おくだ・えいじ) 1950年愛知県生まれ。俳優・映画監督。79年映画『もっとしなやかにもっとしたたかに』で初主演。86年『海と毒薬』で毎日映画コンクール男優主演賞、89年『千利休 本覺坊遺文』で日本アカデミー主演男優賞を受賞。94年『棒の哀しみ』ではキネマ旬報、ブルーリボン賞など8つの主演男優賞を受賞する。2001年監督デビュー。近年の出演作に、主演映画『洗骨』(19年/照屋年之監督)、連続テレビ小説「らんまん」(23年度前期/ NHK)などがある。主な著書に、『男のダンディズム』(KKロングセラーズ)、『私の死生観』(共著/角川oneテーマ21)など。

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