ヤクルト本社 開発研究部 商品研究一課課長 星亮太郎(ほし・りょうたろう)/1976年、神奈川県生まれ。大学院修了後、2002年に入社、開発部の商品研究課に配属。国内外向けの乳製品「ミルミル」「ジョア」「Yakult(ヤクルト)1000」などの商品開発を担当。22年から現職(撮影/写真映像部・高野楓菜)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2023年9月25日号にはヤクルト本社 開発研究部 商品研究一課課長 星亮太郎さんが登場した。

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「おひとり様1本まで」

 都内スーパーの「Y1000」の商品棚は、発売から2年以上経った今も品薄状態が続いている。

 従来のヤクルトの5倍の「乳酸菌 シロタ株」が含まれている「Yakult1000」は、2019年秋に地域限定で発売。21年春に全国展開されると、「ぐっすり眠れる」などの口コミが広がり、瞬く間にヒット商品になった。

 開発が始まったのは2000年ごろで、早い段階で菌数を商品1本100ミリリットルあたり1千億個に増やすことはできていた。けれども、味や賞味期限の短さなどの課題が山積みだった。

 一つの課題をクリアしたと思ったら、また別の課題が浮き彫りになる──。もう少しでゴールだと思っていたら行き止まりで、振り出しに戻ることを繰り返してきた。その中で壁を乗りこえられたのは、既存の発想の延長線で物事を考えるのではなく、「ゼロベースで考えること」を意識してきたからだ。

「製造方法やコストなどにおいて、まずはゼロをしっかり定義したうえで、工程を考えていく。その進め方が、技術者のマネジメントだと思っています」

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