35からです、茄子が好きになったのは。「やっぱり嫁には食わしちゃダメ!!」と思ったね。なんでだろう、なにがきっかけだったのか?……そうだ、思い出した! 新橋の中華屋さんで食べた、茄子のフリッター。塩胡椒だけかかってるごくシンプルな揚げただけの茄子。あれがメチャクチャ美味かったんだ! ビール茄子、ビール茄子、茄子茄子、ビール、ビール茄子……。茄子のおかげでビールまで美味くなって止まらなくなりました。おかわりしたもの、あの日の茄子。恐怖すら感じましたよ、あの茄子は。

 そうしたらね、他の茄子料理も好きになったのです。なんか開けてきたかんじ。三つ目の眼が開いたというか……。茄子の煮浸し。あれは茄子が汁を味わわせてくれるのね。茄子のおかげでだし汁の味わいがわかる。茄子の肉詰め。頑張って詰められてるよ、茄子。けっこう無理してる。肉汁が滲みて、皮のてかりが最高。味噌田楽。これまた味噌を味わうには茄子がちょうどいい。他の具材にのせたらいけない。味噌のパワーをやんわり受け止める茄子、さすがの女房役。茄子の味噌汁。味噌汁に浮いたときのあの渋い表情が憎い。優しい歯ごたえ。味噌汁を吸った柔らかみ、母のごとし。焼き茄子。もう脇役とは言わせない!という茄子の意思を感じさせながら、醤油をかけたときにその醤油すらも引き立たせる受けの美学。茄子の天ぷら。揚げたてもさることながら、一晩寝かせて油を吸ったものを甘辛く煮た茄子の天ぷらの大胆過ぎる二面性に驚愕。麻婆茄子。食べれば食べるほどご飯が欲しくなる、おかずの中のおかず。挽肉と絡まりタレを吸い尽くした茄子の乱れた姿。子どもにはわかるまい。茄子の古漬け。酸味を全身で吸った茄子のあの他にはない歯ごたえ。つやつやと輝く紫ならぬ茄子紺色の一切れを口に含むと、漬物としては少しオーバーなくらいの汁が滲み出てきます。それが口内にあるうちにご飯を食べるもよし、日本酒を含むもよし……。

暮らしとモノ班 for promotion
ジムやヨガのウェアは何を着る?Amazonでみんなが狙っているワークアウト用ウェアをチェック!
次のページ
なんだよ! いい姑じゃんか