この件で、小渕氏は経産相を辞任し、自身も刑事告発された。結局、嫌疑不十分で不起訴となったものの、世間の疑念を払しょくできなかったのは事務所が驚きの対応をしたことが大きい。
家宅捜索に入る直前、小渕氏の事務所は重要な証拠となりうる複数のパソコンのハードディスクに電気ドリルで穴をあけて破壊したのだ。「ドリル優子」と異名をとるようになったゆえんだ。
当時の捜査幹部は、
「ガサが入るのがうすうすわかって、ハードディスクをドリルで破壊するなんてことははじめてだ。こういう時代だから、少々の破壊ならなんとかデータは復旧できる。しかし、ドリルで穴あけたもんだから、まったくデータは復旧できなかった。それもあって事件は秘書、会計責任者止まりで終わってしまった」
と振り返る。
ドリルでの破壊は大きくニュースでも報じられた。
「地元で小渕恵三元首相は知っているが小渕優子と名前を聞いて最初はピンとこない人もけっこういるんだ。しかし、ドリル優子っていうと、ああ知っているって。それくらい不名誉な名前が売れてしまった悲しい現実がある」
と小渕氏の地元の地方議員は話す。
ようやく表舞台に戻ってきた小渕氏には、かねて後ろ盾がいた。小渕元首相の最側近で参議院のドンと呼ばれた青木幹雄元官房長官だ。今年6月に亡くなったが、生前、取材した際には、小渕氏について「実力はお父さん以上だよ」と期待を寄せており、次のようにエールを送っていた。
「(事件で)躓いてしまったが、自分が元気なうちに女性初の総理になってほしいもんだわ。ドリルはいかんが、これくらいで政治の世界でへこたれてはいけない。今は我慢の時、これを乗り切れば道は開ける」